「何度も同じことを言っているのに、なぜか部下が動かない」
「こちらの意図が伝わらず、期待と違う結果が返ってくる」
「ついイライラして強く言ってしまい、関係がぎくしゃくする」
──管理職なら、誰もが一度は経験する悩みではないでしょうか。
決して部下のやる気がゼロなわけではなく、こちらも伝えている“つもり”なのに、思うように動いてくれない。むしろ「自分の伝え方が悪いのでは…?」と自己嫌悪に陥ることさえあります。
結論から言えば、伝わらない原因の9割は“順番ミス”です。
本記事の内容
- 部下に伝わらない原因
- 正しい伝え方の順番
- 部下の行動が前向きになる技術
本記事では、背景→目的→行動という正しい伝え方の流れを解説し、部下が動き出す“期待の伝え方”を紹介しています。
”部下に伝わらない”よくある悩み

まずは上司が日々感じる「伝わらない悩み」を整理しましょう。
- 何度も同じミスを繰り返す
「昨日も注意したのに、また同じことをしている…」と苛立ちが募る。 - 指示を出しても、行動が遅い・動かない
「忙しいのは分かるけど、優先順位が違うだろ」と思う場面が多い。 - 指示を誤解され、意図しない行動をされる
「そこじゃなくて、こっちを直してほしかったのに」と後から修正が必要になる。
実は、これらの多くは部下の“能力不足”ではなく、上司の「伝える順番」が間違っていることが原因です。
なぜ伝わらないのか?原因は“順番”ミス
上司の多くは「結論」から入ります。
「これをやってくれ」
「こうしてほしい」
しかし、背景や目的を飛ばして結論だけ伝えると、部下は「なぜ必要なのか」が理解できず、行動に移せないのです。
私自身も管理職になったばかりの頃は、「やれと言ったらやれ」で済むと思っていました。
結果は空回り。部下からの信頼も得られず、むしろ距離が広がっていきました。
転機は「伝える順番を変えるだけで伝わり方が全く違う」と気づいた瞬間です。
正しい伝え方の順番=「背景→目的→期待する行動」

人は「納得してから動く生き物」です。
そのため、ただ「やってくれ」と指示するだけでは動けません。
特に若手や経験の浅い部下ほど、「なぜその仕事を自分がやる必要があるのか」が理解できないと、指示をスルーしたり、後回しにしてしまいます。
だからこそ、伝え方の“順番”を整えることが重要なのです。
ここで紹介する3ステップは、部下が動き出すための基本の型です。
背景を伝える
まずは「なぜその仕事が必要なのか?」を伝えることから始めます。
背景がなければ、部下にとっては突然の指示にしか感じられず、「とりあえず後でいいか」と優先順位を下げられてしまいます。
例えば──
- 「クライアントから急ぎで依頼が来ていて、今日中に対応する必要がある」
- 「今期の売上が目標を下回っていて、追加施策が必要になっている」
- 「来週の会議に向けて、準備を進めておく必要がある」
こうした一文を添えるだけで、部下は「なるほど、今すぐ取りかからなきゃいけない」と理解できます。
目的を示す
次に伝えるべきは、「その仕事をやることで何を達成したいのか」です。
人はゴールを知らされないまま作業をすると、やらされ感に陥りやすくなります。逆に目的を理解すれば、自分の仕事の意味づけができ、モチベーションも上がります。
例えば──
- 「今回の対応スピードで、顧客との今後の信頼関係が大きく変わる」
- 「資料の完成度が、次のプレゼンでの成果に直結する」
- 「このデータを揃えることで、来月の戦略会議の判断がスムーズになる」
目的を伝えると、部下は「この仕事は単なる作業ではなく、成果や評価につながるものなんだ」と納得して動くようになります。
期待する行動を具体的に伝える
最後に、実際に「どう動いてほしいのか」を明確に伝えます。
ここを曖昧にすると、せっかく背景と目的を理解しても「結局、何をすればいいのか」が分からず、再び迷子になってしまいます。
例えば──
- 「だから、まずはこの資料を先に仕上げてほしい」
- 「今日の17時までに、3案だけでもアイデアを出してほしい」
- 「明日の午前中にA社へ確認の電話をお願いしたい」
ポイントは、短く・シンプルに・期限を明確に伝えること。部下が「次の一手」をはっきりイメージできれば、すぐに行動に移せます。
順番を変えただけで伝わり方が激変した話
私自身、以前は「これやっといて」と結論だけを投げるタイプでした。
その結果、部下は後回しにしたり、こちらの意図と違う形で進めたり…。そのたびに「なんで分からないんだ」とイライラしていたのです。
ところが、この背景→目的→行動の順番で伝えるようにしたところ、驚くほど反応が変わりました。
「なるほど、そういう理由なら優先します」
「分かりました、じゃあこういう進め方で良いですか?」
部下が納得し、前向きに動いてくれるようになったのです。
つまり、部下のやる気や能力不足ではなく、上司側の伝え方の順番こそが最大のボトルネックだったのです。
怒るのではなく「期待」を伝えよう

ここまで見てきたように、正しい順番で伝えるだけで部下の理解度は大きく変わります。
しかし、順番を守っていても「怒り」をベースにした伝え方では、部下は前向きに動いてくれません。むしろ委縮し、失敗を恐れて挑戦しなくなってしまいます。
多くの上司は、部下が動かないと「怒る」ことで修正しようとします。
- 「どうしてこんな簡単なこともできないんだ」
- 「何度言わせるんだ」
確かに一時的には効果があるかもしれません。
しかし怒りは、行動を止めるブレーキにしかならないのです。部下は「叱られたからやる」という義務感で動くだけで、そこに主体性や成長は生まれません。
必要なのは「叱責」ではなく「期待の表明」
部下を動かすには、怒るのではなく「期待」を伝えることが大切です。
言い方を少し変えるだけで、相手の受け取り方は大きく変わります。
- 「ミスをするな」ではなく → 「この部分を改善してほしい」
- 「なんでできないんだ」ではなく → 「次はこうやればできると思う」
怒りで恐怖を植え付けても、効果はその場限り。
一方で「期待」を伝えると、部下は「信頼されている」と感じ、行動が前向きになります。
実践のコツは「短く、結論から、相手目線で」
正しい順番で伝えることに加えて、日常の指示やコミュニケーションで意識したいのがこの3つのコツです。
ほんの少し工夫するだけで、部下の理解度と納得感が大きく変わります。
1. 結論から言う
多くの上司は、説明を積み上げて最後に「だから、これをやって」と言ってしまいます。
しかしそれでは部下は途中で混乱したり、最後まで聞かないと要点が分からず、頭の中で情報が整理できません。
結論を先に提示してから背景や目的を補足すると、部下は最初の時点で全体像を把握でき、安心して話を聞けます。
「今週はクライアント対応が多くて資料作成が遅れ気味なんだよね。だから、君にこれをお願いしたい」
「今日中にこの資料を仕上げてほしい。その理由は…」
最初に「やってほしいこと」を示すことで、部下は「この話は何を求められているのか」と迷わずに聞けます。
2. 短く伝える
部下に伝えるとき、つい背景説明を長々としてしまうのは上司の悪い癖です。
ダラダラ話すと要点がぼやけ、部下は「結局何をすればいいの?」と混乱します。
伝える内容は、1分以内でまとめる意識を持ちましょう。
背景→目的→行動を1文ずつに区切れば、短くても十分に伝わります。
- 「クライアントから急ぎの依頼がある(背景)」
- 「信頼を維持するためにスピードが大事だ(目的)」
- 「だから今日中に資料を仕上げてほしい(行動)」
この3文であれば、30秒もかかりません。それでも必要十分なのです。
3. 相手目線で話す
上司にとっては当然のことでも、部下にとっては「自分にとって何の意味があるのか」が分からないと動きにくいものです。
そこで大切なのは、相手目線に立った言葉を添えること。
- 「あなたに任せたい」=信頼を示す
- 「この経験が次に活きる」=成長の機会を示す
- 「これをやってくれるとチーム全体が助かる」=貢献感を示す
こうした言葉があるだけで、部下は「ただの作業」ではなく「自分の役割」として受け止めやすくなります。
結論から → 短く → 相手目線で。
この3つを意識するだけで、同じ内容を伝えても部下の受け取り方は全く違ってきます。
「正しい順番」にこの3つのコツを掛け合わせることが、部下を前向きに動かす最強の伝え方です。
まとめ:部下を動かすカギは「伝え方」にあり

いかがだったでしょうか?
部下が動かないのは、能力不足ではなく「伝え方の順番ミス」が原因です。
- 背景を伝える
- 目的を示す
- 期待する行動を具体的に言う
この3ステップを意識すれば、部下は納得し、自ら動き出します。
今日からでも「順番」を意識して伝え方を変えれば、部下の反応は必ず変わります。明日の会議や指示出しから、ぜひ実践してみてください。
まずは メール1通・指示1回 からでも試してみましょう。
大きな会議でいきなり試すよりも、まずは小さなやり取りから始めた方が習慣化しやすいですよ。